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【漫画】豊田徹也『ゴーグル』(講談社)

2012年10月25日 01:20

 
ゴーグル (KCデラックス)ゴーグル (KCデラックス)
(2012/10/23)
豊田 徹也

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『アンダーカレント』『珈琲時間』というロングセラーを生んだ豊田徹也はじめての短編集。単行本未収録だった表題作、ファン待望の『ゴーグル』ほか、月刊アフタヌーンにて発表された、感動あり、笑いあり、そのどちらでもない微妙なものありのバラエティー豊かな中短編が楽しめます!
公式HP(雑誌『アフタヌーン』)の作品紹介より
※試し読み可能ですが、Webブラウザ用のプラグインが必要。

「スライダー」 (雑誌『アフタヌーン 2008年1月号』)
「ミスター・ボージャングル」 (雑誌『アフタヌーン 2011年4月号』)
「ゴーグル」 (雑誌『アフタヌーン 2003年9月号』、四季大賞受賞作)
「古書月の屋買取行」 (雑誌『彷書月刊 2007年1月号』)
「海を見に行く」 (雑誌『アフタヌーン 2012年11月号』)
「とんかつ」 (雑誌『アフタヌーン 2012年10月号』)
以上、六作品を収録。
※「古書月の屋買取行」のみショートショート(二ページ)
※「海を見に行く」は「ゴーグル」の前日譚


「…彼はとても高く跳んだ。とても高く跳んだ……」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
(「ミスター・ボージャングル」pp88)
※"Jumped so high, jumped so high. Then he lightly touched down" ――「MR.BOJANGLES」

「おはよう。とかいってもう夕方だなあ。雨も上がったか……ん。お――――――っ。ちょっちょっと来てごらん。ほら」
「ん? 何やってんだあいつら」
「いや――きれいだなあ」
(ひろこがゴーグルを外す)
「本当にきれいだ」
(「ゴーグル」pp145-148)

「夏も終わりだな……なあひろこ!! こうやってしょっちゅうバイクに乗っているとな。季節が微妙に移っていくのが分かるんだよ!! 目で見ててもわからない季節の変化をな! 匂いとか空気の肌ざわりなんかで感じるんだ!! だから毎日毎日おんなじように見えてもな!! 本当は少しずつ少しずつ変わっていくんだよ!! …………変わっていくんだ」 
(「海を見に行く」pp178-179)



 作品との出会いは奇跡のようなものです。当然のことではありますが、売れているからといって、それが優れた作品だとは限りません。たくさんの読者がいるからといって、その作品が好きになれるといった道理もありません。そもそも、好き、嫌いは人それぞれです。だからこそ、たくさんの作品の中から、本当に好きになれる作品と出会うということは、それこそ人生の伴侶を見出すことと同様に難しく、その一方でまた心の底から嬉しいものでもあります。

 前置きが何だかやけに青臭くなってしまいましたが――

 豊田徹也さんの作品に出会ったときのことは今でもよく覚えています。2008年の梅雨のときでした。仕事で終電がなくなり、次の日も朝早くから会議が入っていたので、仕方なしに会社近くの漫画喫茶に泊まることになったのです。しかし運悪く、ひどくごつごつとしたリクライニングチェアで寝つけず、仕方なしに雑誌『アフタヌーン』を「ヴィンランド・サガ」や「無限の住人」目当てでぱらぱらとめくっていたら、「カプチーノ・キッド」(後に『珈琲時間』に所収)という短編に出会いました。

 わたしが大学生の頃はポール・スミスの火つけもあって、モッズのリバイバルブームがありましたから、ポール・ウェラーが使っていたペンネーム(=カプチーノ・キッド」)をタイトルに付していることにまずピンときました。そして、まるでシネフィルが好む単館作品のような穏やかでシンプルなストーリーにすぐ心奪われました。わたしが豊田徹也さんのファンになるのには、その作品だけで十分でした。

 それから、このあまりにも寡作な作家さんを追いかけて、早四年――

 帯には「在庫一掃大放出!」と不穏なことが記されていますが、ずっと読みたいと思っていた四季大賞受賞のデビュー作「ゴーグル」から、2012年初出の新作短編二編までも含む雑多な六作品がこの短編集には収められています。

 あとがきにもある通り、基本的なテーマは「家族の問題のようなこと」。実際に、母子家庭で育った女性がマリッジブルーになり、昔隣に住んでよくしてもらっていた老人を探偵を使って探し求めるという「ミスター・ボージャングル」、母親のDVを契機にコミュ障となった少女がとあるプー太郎のもとにやってくる「ゴーグル」、その前日譚に当たる少女と祖父との日常の一幕を描く「海を見に行く」、それとさながら『美味しんぼ』のように食によって家族や知り合いが邂逅する「とんかつ」といったふうに、文字通り変化球どたばたコメディとなった「スライダー」や、ショートショートの「古書月の屋買取行」以外は全て家族が中心的に描かれています。

 今巻での一番の注目は、四季大賞受賞作かつデビュー作でありながら、約十年もの間、日の目を見ることのなかった「ゴーグル」であり、おそらくファンもそれを目当てに購入しているはずですが(わたしもそうでした)、実際にお気に入りとなったのはむしろ、ソニー・スティットの「ミスター・ボージャングルス」(※もともとはジェリー・ジェフ・ウォーカーというカントリーシンガーのマイナーヒット曲を、日本でもお馴染みのカントリーバンド、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドが戦後に大ヒットさせたもの)の歌詞をベースにしている、タイトルもそのまま、「ミスター・ボージャングル」でしょうか(初出は雑誌『アフタヌーン 2011年4月号』)。

 そもそも「カプチーノ・キッド」との出会いも含めて、「ミスター・ボージャングル」にも出てくる私立探偵・山崎にわたしは惹かれているのかもしれません(一番好きだったのはあの映画監督だけど)。それにラスト前の四ページ。何も台詞がないのが本当にいい。きっとこれが映画になったら、前述の曲が流れているところかもしれません。何というか、本当にカンヌ国際映画祭に出展されそうな作品と言っていいでしょう。

 最後に、漫画でも、ライトノベルでも、キャラクターというのはある程度、誇張されて造形されるものではありますが、豊田徹也さんの描くキャラクターにはそんな脚色が一切ありません。とはいえ、多くの読者は日常に何かしらの問題を抱えていて、作品の中にある種のカタルシスを求めて手を伸ばそうとします。もちろん、個人の問題なんて、簡単に解決できるものではありません。また、漫画の読み切りの程度の分量で、キャラクターが直面する問題が全てが上手くいくわけでもありません。それでも、人も、キャラクターも、前に向かって進みたいと願う――豊田徹也さんの作品には、ありきたりな涙も、笑みの演出さえもないけれど、読者の心を揺さぶるシーンがいくつも詰っています。稀有な、不思議な作家さんだと思います。

 少しビターなコーヒーと共に、たまにはカントリーソングなんかを聞きながら、ぜひともお勧めしたい作品です。



【関連】
【定期】10月4週目のお気に入り
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【漫画】こざき亜衣『あさひなぐ 6巻』(小学館)

2012年09月09日 10:52

 
あさひなぐ 6 (ビッグ コミックス)あさひなぐ 6 (ビッグ コミックス)
(2012/08/30)
こざき 亜衣

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ついに新人戦開幕! 「今日の主人公は、私」――その言葉を胸に、二年チームと一年チームに分かれて団体戦トーナメントに挑む二ツ坂高校。超体育会系軍団や屈強男子チームを相手に団体戦を競り進む中で旭達一年に“勝負の壁”が…! 勝ち進むには卑怯でも引き分けを狙って一点突破にかけなければならない。対戦相手から「恥ずかしくないの?」と聞かれた将子は「ちょっとな」と言いながら、大将・旭にすべてを託すが……。背負った重荷、押し殺した自分。旭、真剣の一振りをみよ。
公式HPはこちら(小学館ビッグコミックスの作品紹介ページ)


「組み合わせなんて大した問題じゃないわ。大事なのは誰と戦うかじゃなくてどう戦うかよ。“今日の主人公は、私”。そう思ってりゃいいのよ」
――宮路真春(pp54-55)

「…凄い。東島さんが…振り返しで一本取った……」
「何ソレ? 必殺技にしては地味な名前だな」
「バカ言うな! 相手が払った力を利用してこうやって力を下向きに回転させて、頭上で持ちかえて打つんだ」
「へー」
「薙刀らしくて、かっこいい大技だよ。僕が一番好きだった技だ。森、少し観ていこう」
「お、おう」
――宮路夏之、森(pp116-117)

「ところで田所さんどう思います? 二ツ坂のやり方ですよ。前二人は勝ち目がないと踏んで、引き分けに持ってったみたいなのよ」
「へえ…まぁまぁ目くじら立てなさんな。いいじゃないの、人を殺したわけじゃあるまいし」
「でも…でもねぇ、上位の大会があるわけでもなし。もっと正々堂々ぶつかって…」
「北川さん。それ、大人の方便。高校生にそんな理屈は通用しないよ」
「でも私は将来的に見て長く続けるのであれば……」
「バカだね。いつかじゃダメなのよ。あの子達には“今”しかないんだよ。団体戦を組むのも難しい学校もたくさんある。途中でやめてしまう仲間も多い。あの子達にとっては一回一回が、最初で最後の大会なんだよ」
 背負った重荷にも、
 押し殺した自分にも、
 全てのことに、意味はあると、
「真剣だから、どうしても勝ちたいと思うんだよ」
「沙也ちゃん、ファイトォォォ!!」
 私は、
 信じている。
「スネあり、二ツ坂!! 二ツ坂高校Bチームの勝ち! お互いに、礼っ」
 まだもう少し、
 この防具を脱ぐのは先の事になりそうです。
――田所、北川、都川みのり、東島旭(pp216-226)

「…あの、真春先輩、次の試合…」
「話しかけないで。人の事、気にかけてる余裕あんの?」
「―――…ありません」
「よかった。私もよ。決勝で会いましょう」
――宮路真春、東島旭(pp239・241)




 こんにちは、mayaです。
 ここ数年ほど、漫画でもライトノベルでもマイナー系部活ジャンルが流行っています。ラノベの場合はSOS団の影響からか、あるものないもの色んな部活動(隣人部とか古典部とか階段部とか奉仕部とか)が出てきましたが、漫画の場合は実在する文化部やマイナースポーツにきちんとスポットを当てている印象があります。

 ブレイクスルーとなったのは、競技かるたを描いた末次由紀さんの『ちはやぶる』(講談社)でしょうが、それ以外でも書道部を扱った河合克敏さん『とめはね』(小学館)、津軽三味線を扱った羅川真里茂さん『ましろのおと』(講談社)、応援部を扱った久保ミツロウさん『アゲイン!!』(講談社)、クイズ研究会を扱った杉基イクラさん『ナナマルサンバツ』(角川書店)、あるいはマイナースポーツならラクロスを描いた古日向いろはさんの『バガタウェイ』(マックガーデン)、タイトルそのまま小野寺浩二さん『カバディ7』(メディアファクトリー)といったところがぱっと思いつきます。

 さて、本作で描かれているのは薙刀部。剣道に似ていますが、構えは五つ、スネも打てる。何より剣道とは違い、やっている高校が圧倒的に少ない。

 本巻はすでに6巻というわけで、春のインハイ予選で三年生は引退、インハイに進出したライバル國領高校との練習試合では地力の差を見せつけられ、体育祭ではチームが一丸となり、二年生と一緒に5泊6日のお寺での過酷な夏合宿をこなし、秋の昇級昇段審査で初めて級をもらい、ついに本領発揮の新人戦編へと突入しています。

 ところで話は変わりますが、マイナージャンルの部活を扱っている作品というのは、その構造上、主人公最強という設定がよく用いられています。一種の貴種流離譚ですね。もともと持って生まれた天性や地力はあるのだけど、何らかの理由でそれを発揮できない、あるいは制限がかかっているといったケースになります。上記の作品だと、競技とは関係のない応援部を描いた『アゲイン!!』、それとチームスポーツの『バガタウェイ』以外、全て主人公には特殊な設定があります。

 こういった構造は仕方のないこととも言えます。そもそも、マイナージャンルはそのモチーフの説明に注力しないといけない都合があり、キャラクター造形に多くのページをかけられません。とはいっても主人公が何かをなさなければストーリーは進みませんから、秘められた力を解放することでカタルシスを生じさせていく傾向が生まれます。

 で、本作『あさひなぐ』――主人公である東島旭さんには何の天性の力もありません。少なくとも、スポーツ漫画史上、最弱であることは間違いないでしょう。
 何といっても眼鏡だし、髪はぼさぼさだし、色気ないし、それに運動音痴だし、すぐ泣くし、そのわりになぜかビッグマウスだし、その上、弱いから練習でも除け者にされがちです。それでも、東島さんは皆に追いつきたいから一人でこつこつ練習し、仲間想いで、馬鹿の一つ覚えみたいに真っ直ぐで、そのせいなのか教わったことを素直にやって勝ったりもします。

 白眉は2巻の練習試合のシーン(17本目「見苦しか女」、18本目「いい鼻血」)。試合前から緊張で泣き、体もがちがちで転倒し、いきなり脳天打たれて頭が真っ白になり、息も上がり、鼻血も出し、本当に見苦しい様を呈しながらも、宮路先輩に声をかけられて一縷の光を見つけます。

 また、3・4巻の寺合宿のシーンもいい(31本目「弱き者の武道」、38本目「理想の女」)。練習で一人だけ除け者にされたのに、こつこつと基礎練習だけやり続け、ついに参加した円陣稽古では皆が諦めかける中、戦う意義を見出して前へと進み出てきます。

 ここまで「努力、友情、勝利」が似合う作品も、今となっては本当に珍しい。

 話がずいぶんと脱線しましたが、本巻では、その努力と友情がついに実を結びます。新人戦に向け、Aチーム(二年)、Bチーム(一年)に分かれた二ツ坂高校は破竹の勢いで勝ち続け、ついに東島さんのいるBチームは準決勝にて昇級昇段審査で友情を培った薬師丸ひろ美さんのいる聖泉Aと、もう片方の宮路先輩率いるAチームはライバル一堂さんのいる國領Aと相対することになります。ラストシーンで約束したように、東島さんと宮路先輩の二人は決勝で相見えることができるのでしょうか。

 ちなみに、個人的には新人戦前の55本目「武具屋の娘」で、國領一年の的林つぐみさんの武具屋を訪問するシーンや、56本目「手のひら」で東島さんが宮路先輩の実家を訪問するシーンがわりと好きだったり。特に、小手を直す為に家に招いておきながら、「あとひとりでできるわね。分んなかったら夏之に聞いて」と弟に無茶振りして、グォー、グォーと鼻息立てて寝つく宮路先輩マジかっけぇ。きれいな先輩のこんな姿見たら百年の恋も冷めるというものですが、宮路先輩ならむしろOK。もっと豪快でひどい寝相さえ見たい。やはり、『あさひなぐ』では一番好きなキャラクターです。

 それはさておき、天性のものも、特別な能力もなく、ただひたむきに、ひたすらに、弱者が弱いなりにがんばって真っ直ぐ勝利を目指す――そんな作品を最近は読んでないなあという方に、本作は絶賛お勧めです。



◆関連
【定期】9月1週目のお気に入り

【漫画】久保ミツロウ『アゲイン!! 5巻』(講談社)

2012年07月24日 00:01


アゲイン!!(5) (KCデラックス)アゲイン!!(5) (KCデラックス)
(2012/07/17)
久保 ミツロウ

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公式HPはこちら(講談社週間マガジン作品紹介ページ)
※第一話の試し読みができます。


高校生活三年間、友達も思い出も作らず卒業式を迎えた今村金一郎。だが同級生の女子・暁と階段から転げ落ち、気づいたら3年前の入学式の日へタイムスリップしていた! 憧れていた女団長・宇佐美と再び出逢った金一郎は、応援団に入団し宇佐美が独りで頑張る応援団の建て直しを目指す!!(上記公式より作品紹介)

もし金一郎が“アゲイン”していなかったら。その世界での宇佐美は、応援団が潰れた後、学校を辞めて行方もわからないまま……。
再び三年前の世界に戻った金一郎は、宇佐美にアゲインのことをぶっちゃけ、彼女の悲惨な運命を変えるため行動を開始! 未来を左右する野球部対抗戦まではあとわずか。応援団はガッチリ団結して新しい応援を作ろうとするのだが、なぜか金一郎と宇佐美の仲に尾ヒレがついて大スキャンダルに巻き込まれたり、金一郎への気持ちに気づいたレオが泣き出したり、前途多難なその道のり。“アゲイン”で、世界を変えることはできるのか!?(五巻の帯より)


「応援団を好きになってもらってから、今度は野球部を好きになってもらえる応援をすること。観客と試合をつなげる応援団がまず信用されなきゃダメだろ」
「そんなこと言われてもどんな応援だ!? 好きになってもらえる応援とか……考えたことなかった…そもそもそんなの応援なのか……」
「だから、団長が一番かっけーって思えるトコは俺が分かるから、俺が団長をプロデュースしてやるよ」
(今村金一郎、宇佐美良子、pp39-40)

「応援を……こんな楽しんでいいもんなんだろうか…バカにされたりしないだろうか…今までもっと厳格なものだったのに急にこんな……」
「ひょっとしたら大スベリで総スカンかもな」
「えっ」
「そんで試合もボロ負けとかで、でも、俺は、団長が一人で応援しようとして失敗して、試合も負けて学校も辞める世界よりかはマシだと思う。いいじゃん、別に。同じ後悔なら、やりたいことやった後悔しようぜ」
(今村金一郎、宇佐美良子、pp84-85)

“お前のせいで負けたんだ”
“今村さえいなければ”
“ジャマなんだよ”
 俺のせいでもし負けたら、団長は……
 考えるな!!
「………………やべえ……全然寝つけなかった…」
 アゲインでこの世界、変えてやる!!
(今村金一郎、pp86-88)



 こんにちは、mayaです。
 応援団を扱った漫画というのはヤンキーものも含め、スクールウォーズ全盛の80年代から90年代前半にかけて隆盛とは言わずとも、所十三さんの『名門! 多古西応援団』(講談社)や石山東吉さんの『男旗』(秋田書店)などいくつか有名な作品が出てきました。あるいはメインではなくとも、『ろくでなしBLUES』(集英社)の輪島や大橋、『はじめの一歩』(講談社)の梅沢も良い味出していました。

 しかし、バンカラ気質が死滅し、番長というポジションもすっかり死語となり、野球やラグビーよりもサッカー人気が高くなった現在、応援団をモチーフにした作品はめっきり目にしなくなっています。

 そういった状況の中で、2001年に久保ミツロウさんは『3.3.7ビョーシ!!』(講談社)を引っ提げて『週刊少年マガジン』で連載をはじめ、その後も『トッキュー』(講談社)という男臭い(というよりはいかにも少年漫画らしい)作品を長らく描き、それから変化球の『モテキ』(講談社)の大ヒットで多くのファンを獲得しました。

 そんな久保ミツロウさんが次に何を書くのか? ――答えは意外にも原点回帰でした。それも、もうほとんど誰も書かなくなった応援団をモチーフとした漫画。

 そして、『アゲイン!! 1巻』のあとがきにて「高校の頃からずっと描きたかった応援団。すでに『3.3.7ビョーシ!!』で描いたのでは、と言われますが。いや、あれは応援団がなくなる話ですから!! 全然応援団描いていないから!!」と記し、このモチーフに全力で取り組むことを宣言したのです。


 本作の魅力は、何といっても一癖も二癖もあるキャラクターたちに尽きます。まずはヒロイン(たぶん)の女の応援団長こと宇佐美良子さん。眉はきりりと太めで黒い長髪ストレート。これは萌える。可愛いというよりも正しく清廉。しかも孤高。だがしかし、よくよく読んでいくと……これが何とまあ見事な脳筋!! 好きな言葉は、努力、根性、伝統と精神、そして全力! 『魁!! 男塾』とか『金剛番長』とか『天元突破グレンラガン』あたりにぶちこんでも全く違和感のないキャラだったりします。

 対する主人公の今村金一郎くんは金髪のロングストレートで眉なし。その怪しすぎる容貌から小中高とぼっちで過ごしてきたコミュ障男子。ひきこもりにならなかったのが不思議なくらいですが、同性から見ても色々と救いようがなく、言葉使いも悪く、態度も悪く、性格もマイナス方向にねじ曲がっていて、たまにかっこいいこと言っても顔がすげえ引きつっていたりと、まあ、それでもたまに見せる弱さが妙に母性本能をくすぐるときもあります(たぶん)。

 ストーリーはそんな金一郎くんが高校三年最後の卒業式の日に、たまたま旧校舎で出会った藤枝暁さんに何か勘違いされ、一緒に階段から落ちて意識不明の重体となるところからはじまります。気づいたときには金一郎くんは高校一年の姿に戻っていました。つまり、タイムリープ(作中では“アゲイン”)していたのです。

 金一郎くんには一つの心残りがありました。それは入学式の後に女応援団長の三年生・宇佐美良子さんから声をかけてもらったこと。実は金一郎くんは、宇佐美さんが壇上でたった独りで行った新入生歓迎エールに感じ入っていたのです。だから、呼び止められたときに逃げてしまった金一郎くんはずっと後悔していました。なぜなら、そのすぐ後に応援団が潰れてしまったからです――あのとき、もし逃げずに応えていたら……


 作品はその後、応援団に入部した金一郎くん、彼と同様にアゲインしてしまった藤枝さんを巻き込み、チアリーディング部との確執、宇佐美さんから離れていった元団員との和解、そしてライバルとなるかぼ高(かぼす国際スーパーサイエンス高等学校の略)の登場に、タイムリープと恋愛とドタバタコメディも入り混じって、怒涛のごとく展開していきます。

 1・2巻は、潰れてしまう応援団を立て直そうとぶつかり合う青春タイムリープものとして、3巻はおぱーいもみもみやパンツ姿なども飛びかう色ものコメディとして、4巻からは再び未来に戻ってしまうトラブルを乗り越えて、負けるはずだった定期戦と、その後に自主退学をしてしまうはずだった宇佐美さんの人生を変えるためにもう一度アゲインするSFとして、作品はがむしゃらに進んでいきます。

 そして本巻では、金一郎くんと藤枝さんのアゲインの秘密を知ってしまった宇佐美さんがついに金一郎くんと恋愛がらみで学校中を巻き込む大スキャンダルを起こしてしまいます。いつも思うんだけど、頬を赤らめる宇佐美さんは素晴らしい。あと、pp5のエイリアン顔……何という顔芸……

 それに加えて、宇佐美さんは伝統や精神に囚われていた自分自身も見直し、さらに金一郎くん自身も「アゲインでこの世界、変えてやる!!」と決意をするといったふうに、今巻は正しく転機の回だと言っていいでしょう。

 青春とは、もしかしたら何かに勝つまでかわいく踊って楽しむことなんじゃないかと、ふとほろ苦く思わせてくれる作品。本当にごちそうさまでした。何より、嫌なキャラクターが一人もいないというのも珍しい。色々と画策する安部珠貴さんも、おっぱいもみもみ部長とマネも、おばあちゃんや北島先生さえも愛しく思える不思議な作品。

 金一郎くんはもとの世界に再び戻ったとき、果たしてそこに何を見出すのでしょうか。
 その前に、次巻は「恋愛爆弾暴発」との予告なので、金一郎くん・宇佐美さん・柴田さんの三角関係と、鈴木くんと柴田さんの新展開、それにチャンクマの動向と、ヒロくんと藤枝さんの元サヤもわたし気になります。



◆関連
【定期】7月3週目のお気に入り

【マンガ】天乃忍『ラストゲーム 1』(白泉社)

2012年01月25日 22:47

 
ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)
(2012/01/04)
天乃忍

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超完璧少年・柳の前に、転校生・九条が現れ、勉強・運動で惨敗! 柳は人生初の挫折を経験し、九条への雪辱を誓う。同じ中学、高校に進学する中、「惚れた方が負け」という言葉を耳にし、柳はある事を決意する。10年に渡る2人の勝負《ラストゲーム》が、今始まる!!
公式HPはこちら(花とゆめ.comトップページへのリンク)
※ウェブで試し読みを公開中。


今まで出会った奴らは、好悪どちらにせよ、オレに対して何らかの感情を寄せてきたのに、コイツが見てるのは前だけだ。…こっちを見ろよ。思い知れ。――お前に勝って、その瞳にオレを映させてやる。
――柳(第1話、GAME1)

その柳とも、向こうから声をかけてきてくれたから成り立っていた関係だったんだ。私はいつの間にそれを当たり前だと思うようになっていたんだろう。――私はいつだって、彼に助けられていたのに。
――九条(第3話、GAME3)

「勝負しようぜ、九条」
「……何、いきなり」
「正真正銘、最後の勝負《ラストゲーム》。オレが九条に気持ちを自覚させられたら、オレの勝ち――どう?」
「…何の話?」
「オレが勝ったら――」
――柳、九条(第3話、GAME3)


 三日坊主にならなかったどー。

 こんにちは、mayaです。地味に更新していきます。三十路ももう半ばに近いおっさんが少女漫画を紹介してどうするんだというかるい絶望感もあるわけですが、そんなこといったって、良い作品は本当に良いのです。ちなみに、本作は三篇所収の短編集で、『ラストゲーム』(平成23年)以外の『きみと、しあわせ』、『ひだまりの庭』はそれぞれ平成15年、14年の描き下ろしとなります。

 主人公の柳くんは、顔も良ければ、家もお金持ち、勉強もできて、スポーツもできる完璧超人。やや傲岸不遜で、自分の物差しでしか物事を見られないという欠点はありますが、いわゆる王子様気質のぼんぼんです。当然のように傲岸に振る舞っていた小学校時代、柳くんの前に無口かつ地味かつ貧相な一人の少女が転校してきます。少女の名前は、九条さん。彼女は王子様よりも優れた成績を文武において示し、激昂した柳くんにこう言い返します――

「オレにそんな態度とっていいと思ってんのか!? オレは柳リゾートの跡取りなんだぞ。社長の息子なんだ」
「社長の息子だかなんだか知らないけど、それはあなたのお父さんがすごいんであって、あなた自身がすごいわけじゃない」

 初の挫折でさらにヒートアップする柳くん。勉強のしすぎでふらふらと意識朦朧となり、たどり着いた先は(倒れていたところを九条さんに担がれた)、六畳間ぐらいのボロアパート。そこは九条さんの実家。そこで柳君は、九条さんは母子家庭で、お母さんは娘を育てる為にいつも夜遅くまで働いており、逆に九条さんはいつかお母さんを楽にしてやりたいからしっかり勉強してることを聞きます。

――九条の作ったチャーハンはうまかった。オレは、生まれて初めて誰かに対して、負けたって思った。

 さて、その九条さん。中学に進学してからも、文武両道をそのまま突き進み、暗く、友達もなく、地味で、それでいて超然としているところからついたあだ名は『鉄の女』。対して、見事な女たらしに成長した柳くんは、あるとき、九条さんに廊下でスルーされかけたことをきっかけとして誓うのでした。

――お前に勝って、その瞳にオレを映させてやる。

 ところが、その勝負について、脳内のシナプスのどこがどう発火したのかは分かりませんが、「惚れた方が負け」だという言葉をちらりと耳にして、柳くんはとあることに気づきます。

――お前をオレに、メロメロにしてやるぜー!!(悪人面)。

 というのが、第1話「GAME1」の簡単なあらすじです。つまり、小学校から中学時代が第1話、高校時代が第2話、そして大学時代が第3話となります。ただし、本編では冒頭で大学時代のシーンが挿入されており、そこで柳くんが九条さんに対して、「最後の勝負《ラストゲーム》をしよーぜ」と持ちかけるという入れ子構造になっており、その結果、プロローグがエピローグへと繋がるようになっています。
 はてさて、「最後の勝負《ラストゲーム》」の結果は如何に――


 本作、九条さんはさながらロボットのように全く表情を動かさないのですが、あるシーンで唯一動揺し、そして笑みも浮かべます。その九条さんの微笑が何よりも素晴らしい。誌上では三話のみの短編の予定だったそうですが、読者の要望により、続編が決定しており、小学校時代から戻ってストーリーを濃くするのか、それとも大学時代のこのラストゲームの着地を描くのか、いずれにしても、これまた素晴らしい作品です。

【マンガ】別天荒人『トーキョー・ガールズ・ディストラクション 1』(マッグガーデン)

2012年01月16日 20:33

 
トーキョー・ガールズ・デストラクション 1 (マッグガーデンコミックス Beat’sシリーズ)トーキョー・ガールズ・デストラクション 1 (マッグガーデンコミックス Beat’sシリーズ)
(2012/01/14)
別天 荒人

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近未来の日本。太平洋上の人工島「天尊」に、本物の大和撫子を輩出するための国立女子校が存在していた。雨洲九未は学園内で不慮の死を遂げた姉の死因を探るべく、転校生として潜入するが…。そこはとある時間をきっかけに、淑女が雌へ変貌する秘密があった!!
公式HPはこちら
※ウェブで第1話と最新話を公開中。


「あたしはあの人を裏切ったりしない 絶対に!!」
――雨洲九未(第5話、傷と絆)


 こんにちは、mayaです。遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
 一年ちょいぶりのブログ更新です。今年はちょくちょく暇を見つけて更新していきたいと思います。とはいえ、また三日坊主になりそうな気もしますが……

 さて、掲題の通り、別天荒人さんの『トーキョー・ガールズ・ディストラクション』(マッグガーデン)です。基本的なストーリーはあらすじの通り。昼の学園パートはもうちょっとマリみてみたいな淑女の園をイメージしていたのですが、生徒会から見張られるし、壮絶女教師からは虐められるしで、どこが大和撫子の淑女パートなんじゃい、とツッコミを入れたくなりますが、まあ、要するに、バトルロワイヤル・イン・女学校といったところです。

 面白いのは、力の上下関係が集めた校章(星)によって決まるということ。何だか、『はやて×ブレード』(集英社)の星取りに似ている気もしますが、そっちはチャンバラでルールあり、本作は肉弾戦でのデスマッチです。とはいえ、デスマッチといっても、子分を従えて勢力を作る方が良いらしく、よほど頭に来ない限りは殺しはしないのかな……

 で、見どころとなるのは、主人公・雨洲九未なのですが、彼女は全く大した能力を持ち合わせていない。いや、あるのは鋼の志のみ。それは姉が天尊学園で死んだ真相を知りたいということ。そして、どんな最悪な状況に陥ったとしても、姉の盟友であり、第1話にて恩人にもなった不来幸呼を裏切らないという固い意志――いわば、本巻は、主人公・雨洲九未と盟友・不来幸呼との出会いと友情のはじまりの物語でもあるわけです。

 個人的には、不来幸呼があまりにも早く雨洲九未になびきすぎているなあとは感じたのですが、生徒会の一人が言っているように、きっと「内面は捨てられた子犬」のような人なんでしょう。そんな不来幸呼の弱さももっと見たい気はしたのですが、全体的なスピード感、そして、今後、この二人に襲いかかるであろう試練を考えると、これからもマストバイでお勧めな一冊となります。

 以下、個人的なメモと疑問点――

・半年間も不来幸呼は懲罰房に両手を縛られて入れられていた間、いったい誰が食事や下の世話をしたのか(そこかよ)。
・姉は本当に死んだのか。なぜ死んだのか。そして、なぜ死ぬ前に盟友の不来幸呼を懲罰房に閉じ込め、孤立させたのか→たぶん、生徒会の頂点に立っていて、何らかの理由で妹を呼び寄せたというのがストーリーで一番ありうるパターンですが……
・というか、不来幸呼の強さ。これ、遺伝子操作されているレベルじゃね。何か背景にありそうだよなあ→と思ったら、WEB公開の第7話で似たような化け物が出てきました。何という男塾w
・信念と、誰かを信じるという思いだけで、多くの人を仲間にし、トップに立ったら、雨洲九未さんマジカッケー。平成の劉備玄徳になれるな。そして、天下三分の計。

 そういえば、この作品、生徒会に属さない有力生徒、生徒会と対峙していったら、次は教師、OBと話が進んでいって、さらに世界各所に創られた天尊学園みたいに発展していきそうですよね。となると、やっぱり魅力的な江田島平八さんキャラがほしいところ。

【マンガ】2010年度ベスト

2010年12月31日 11:49


 こんにちは、mayaです。
 今年も残すところ、あと24時間をとっくに切っていました。そんなわけで、前回、前々回に引き続き、2010年に聞いて、観て、あるいは読んで良かったものについての簡単なメモとなります。今回は、マンガに関して――


【2010年 マンガ・ベスト】


 
黄昏乙女×アムネジア 2 (ガンガンコミックスJOKER)黄昏乙女×アムネジア 2 (ガンガンコミックスJOKER)
(2010/01/22)
めいびい

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黄昏乙女×アムネジア 3 (ガンガンコミックスJOKER)黄昏乙女×アムネジア 3 (ガンガンコミックスJOKER)
(2010/07/22)
めいびい

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◇めいびい、《黄昏乙女×アムネジア》シリーズ、2・3巻(スクエアエニックス)

 2009年、表紙の夕子さんに引かれて、ジャケ買いをしてしまった1巻。そのときには、ライトノベルでもありがちな幽霊デレのオチモノでしかないかなー、と思っていたのですが、2010年、この2巻、3巻で一気に化けてきました(ヒロインの夕子さんが幽霊だけにね!)。
 そんな夕子さんがいつも微エロなのは相変わらずなのですが、主人公と同じ部活の小此木さんだけでなく、幽霊が見える体質の霧江さんという対抗ヒロインも登場してきてさらにハーレム度がアップ。しかもそれだけに留まらず、サイコスリラーな要素もアップしてきたのですから、今後の展開に目が離せなくなるのは当然です。
 とにもかくにも、めいびいさんの描くイラストを気に入った方は、購入して間違いなし。毎回、表紙をめくったところに描かれている夕子さんが可愛いのも高ポイントです。
 現在、3巻まで発売中。


 
超人学園(1) (少年マガジンKC)超人学園(1) (少年マガジンKC)
(2010/03/17)
石沢 庸介

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超人学園(2) (少年マガジンコミックス)超人学園(2) (少年マガジンコミックス)
(2010/09/17)
石沢 庸介

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超人学園(3) (少年マガジンコミックス)超人学園(3) (少年マガジンコミックス)
(2010/12/09)
石沢 庸介

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◇石沢庸介、《超人学園》シリーズ、1~3巻(講談社)

 今年は、諌山創さんの『進撃の巨人』(講談社)がネット上で大きく取り上げられたこともあり、『別冊少年マガジン』誌の漫画が多いに語られる年となりました。よく聞いたのは、「別マガなら、進撃の巨人か、バニラスパイダーか、超人学園か――」
 というわけで、わたしはこの『超人学園』をプッシュなのです。基本的には、《ONE PIEACE》シリーズの演出をもろに前面に出し、それを繰り返してくるためにちょっとばかしマンネリ感があるのですが、何にしても、1巻の小生ことハチのエピソードがいい。チョッパーもそうですが、動物は卑怯ですよw
 3巻に入って、家なき子のエピソードがやや長いなと感じつつも、これで残るのは妖怪だけといったところでしょうか。さて、どのように展開していくのか楽しみです。
 現在、その3巻まで発売中。


 
卒業生-春- (EDGE COMIX)卒業生-春- (EDGE COMIX)
(2010/01/28)
中村 明日美子

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卒業生-冬- (EDGE COMIX)卒業生-冬- (EDGE COMIX)
(2010/01/28)
中村 明日美子

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◇中村明日美子、『卒業生 ‐春‐』、『同‐冬‐』(茜新社)

 2010年7月に急病により、執筆休止をしてしまった中村明日美子さん。ここ1、2年で一気に知名度を上げてきて、今年は『このマンガがすごい』の女性版でトップ10にランクインしていただけに、何とも惜しまれるところです。
 本作は、2008年に発表されて、中村明日美子さんのファン層を一気に広げた『同級生』の続編となります。中村明日美子さんといえば、倒錯的なエログロといったイメージがどうしてもありますが、この数年に発表された短編集のようにさわやかな恋愛モノでも、その筆力をいかんなく発揮できる作者さんで、ジャンルはまあBLに入るわけですが、男性読者にもお勧めのできる良質な青春モノとなっています。佐条、可愛いよ佐条!
 そうそう、男性読者でBLはちょっとなあという方は、『片恋の日記少女』(白水社)や『曲がり角のボクら』(同)あたりから入るのがベターかもしれません。


 
とある科学の超電磁砲 5 特装版―とある魔術の禁書目録外伝 (電撃コミックス)とある科学の超電磁砲 5 特装版―とある魔術の禁書目録外伝 (電撃コミックス)
(2010/06)
鎌池 和馬

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◇冬川基、《とある科学の超電磁砲》シリーズ、5巻(電撃コミックス)

 今年は、個人的に《とある魔術》シリーズにどっぷりとハマッたシーズンになりました。そのきっかけとなったのがこちらの漫画。前々からこのシリーズは購入していたのですが、この巻にて登場したアイテム4人組がいったいどんなふうになるんだろうかと興味が湧いて(ついでに打ち止めももちろん可愛くて)、結局のところ、原作を全て買ってしまったわけなんです。打ち止め可愛いよ打ち止め!w
 まあ、それはともかく、原作では瞬殺されてしまったフレンダ、同じくすぐにお亡くなりになったはずの絹旗たんがこの巻で超活躍しているのが超ポイント。何で、原作ではこの二人が超殺されちゃったんだよー、超かまちー先生!
 ちなみに、読み返してみると、このアイテム四人組、3巻でちらりと出ているんですよね。いっそのこと、もうひとつ外伝を作って、『とある都市の暗部組織(アイテム)』なんかやってくれないですかね。
 現在、こちらの外伝漫画は5巻まで、本編の方の漫画は7巻まで、そして原作のライトノベルは22巻まで発売中です。


 
乱と灰色の世界 2巻 (ビームコミックス)乱と灰色の世界 2巻 (ビームコミックス)
(2010/11/15)
入江 亜季

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◇入江亜季、《乱と灰色の世界》シリーズ、2巻(エンターブレイン)

 入江亜季さんといえば、《群青学者》シリーズ(エンターブレイン)で高い評価を受けてきた作家さんですが、あちらの作品は雑多な短編集という色合いが強く、この《乱と灰色の世界》シリーズにて長編作家としてのポジションを確立したといってもいいでしょう。古いラノベ好きだったら、徳間デュアル文庫などに挿絵を書いていた入江アリ名義の方を覚えているかもしれません。
 そんな入江さんの魅力といえば、レトロテイストな作風であり、萩尾望都さんや竹宮恵子さんの影響をダイレクトに受けているといったふうで、最近の漫画の中ではまちがいなく、エブリデイマジックの最高峰といったところでしょうか。
 この2巻では、主人公でありヒロインの乱のラブストーリーに広がりを見せるだけでなく、兄の陣、そして母の静と父の全にもそれぞれ恋愛要素が用意されていて、さらに「骸虫」の侵略もあり、一気にストーリーの幅を広げてきた感があります。
 現在、2巻まで発売中。


 
描かないマンガ家 1 (ジェッツコミックス)描かないマンガ家 1 (ジェッツコミックス)
(2010/11/29)
えりちん

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◇えりちん、『描かないマンガ家』(白泉社)

 正確には、描けないマンガ家といった方がいいでしょうかw わたしも、長らくとある投稿サイトにお世話になってきたわけですが、たまにこの主人公の渡部勇大くんみたいなキャラクターが出てくるんですよね。いわゆるビッグマウス――いや、言うだけいって、ちゃんと描いているならまだマシなんですよ。でも、たいてい、掲示板やチャットなどで上から目線で教えたがったり、業界話をしたりするわりには、全くもって実力が伴っていない、あるいは何にも描かないといったタイプが百害あって一利なしで、本作はそんな後者のお話、漫画家志望バージョンです。
 とはいえ、さすがにフィクションだけあって、この渡部くん、色々な紆余曲折を経て、意外とモテるんです。そこだけが許せないw まあ、何にしても、ペンネーム、電魔姦汁漏こと、山井真琴先生によるエログロド鬼畜、ハードコア無修正モノの新刊を楽しみに待っていますw
 そんなわけで、とある投稿サイトに一年ぐらいお世話になっている人には、「あー、これあるある」といった感じですぐに馴染める作品です。ところどころの名言(迷言?)にたまに痺れます。


 
斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス)斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス)
(2010/12/22)
榎本 俊二

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◇榎本俊二、『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』(講談社)

 雑誌『アフタヌーン』にて、一挙掲載120ページという離れ業にて発表されたこの作品。とりあえず、タランティーノも、ドン・ウィンズロウもびっくりなほど、斬る、斬る、斬る、といった感じで、タイトルに偽りなく、499人ものキャラがこの一冊で斬り殺されているのは間違いありません(さすがに数えてませんがw)。
 血が血で洗われていくかのような凄惨で壮絶なスピード感は、少しばかり人を選ぶかもしれませんが、2010年アクション漫画の最高峰といっても過言ではなく、とりあえず、まずは読んでください、としか言いようのない圧倒的なユニークネスを持った作家さんです。



なんだ!?このマンガは!?なんだ!?このマンガは!?
(2010/10/23)
J君

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◇「BLACK徒然草」管理人J君、『なんだ!? このマンガは!?』(彩図社)

 漫画そのものではなく、漫画評論になります。レビューサイトの「BLACK徒然草」といえば、へんてこな漫画ばかりを取り上げることで有名なサイトさんですが、本作は、そのレビューの中から選りすぐりのものをピックアップしたものとなっています。
 人気のいない道路で裸になってオナニーをしながら愛をかわすカップルを描いた『超愛の人』(成田アキラ、講談社)、板垣恵介さんもびっくりの『超劇画 聖徳太子』(滝沢解など、小学館)や、愛国無罪で一部にはきわめて有名な『ケンペーくん』(ならやたかし、ブッキング)など、取り上げられる作品のへんてこさは明らかに異常w さらに、管理人J君の淡々としたツッコミからなるレビューも秀逸w
 ちょっとだけ不満があるとしたら、fukkan.comなどで復刊された作品の情報が載っていないこと。つまり、漫画初出時の情報しか載っていないので、情報を大事にする漫画評論としてはどうなのかな、とは思います。
 いずれにしても、漫画を読まなくても、レビューだけでその内容がありありと分かり、しかも腹をかかえて笑うことのできる稀有なレビュー集となります。というか、表紙を描いた漫☆画太郎さんに言いたい――あなたの漫画こそ、なんだ!? このマンガは!? じゃないかw



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