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【漫画】こざき亜衣『あさひなぐ 6巻』(小学館)

2012年09月09日 10:52

 
あさひなぐ 6 (ビッグ コミックス)あさひなぐ 6 (ビッグ コミックス)
(2012/08/30)
こざき 亜衣

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ついに新人戦開幕! 「今日の主人公は、私」――その言葉を胸に、二年チームと一年チームに分かれて団体戦トーナメントに挑む二ツ坂高校。超体育会系軍団や屈強男子チームを相手に団体戦を競り進む中で旭達一年に“勝負の壁”が…! 勝ち進むには卑怯でも引き分けを狙って一点突破にかけなければならない。対戦相手から「恥ずかしくないの?」と聞かれた将子は「ちょっとな」と言いながら、大将・旭にすべてを託すが……。背負った重荷、押し殺した自分。旭、真剣の一振りをみよ。
公式HPはこちら(小学館ビッグコミックスの作品紹介ページ)


「組み合わせなんて大した問題じゃないわ。大事なのは誰と戦うかじゃなくてどう戦うかよ。“今日の主人公は、私”。そう思ってりゃいいのよ」
――宮路真春(pp54-55)

「…凄い。東島さんが…振り返しで一本取った……」
「何ソレ? 必殺技にしては地味な名前だな」
「バカ言うな! 相手が払った力を利用してこうやって力を下向きに回転させて、頭上で持ちかえて打つんだ」
「へー」
「薙刀らしくて、かっこいい大技だよ。僕が一番好きだった技だ。森、少し観ていこう」
「お、おう」
――宮路夏之、森(pp116-117)

「ところで田所さんどう思います? 二ツ坂のやり方ですよ。前二人は勝ち目がないと踏んで、引き分けに持ってったみたいなのよ」
「へえ…まぁまぁ目くじら立てなさんな。いいじゃないの、人を殺したわけじゃあるまいし」
「でも…でもねぇ、上位の大会があるわけでもなし。もっと正々堂々ぶつかって…」
「北川さん。それ、大人の方便。高校生にそんな理屈は通用しないよ」
「でも私は将来的に見て長く続けるのであれば……」
「バカだね。いつかじゃダメなのよ。あの子達には“今”しかないんだよ。団体戦を組むのも難しい学校もたくさんある。途中でやめてしまう仲間も多い。あの子達にとっては一回一回が、最初で最後の大会なんだよ」
 背負った重荷にも、
 押し殺した自分にも、
 全てのことに、意味はあると、
「真剣だから、どうしても勝ちたいと思うんだよ」
「沙也ちゃん、ファイトォォォ!!」
 私は、
 信じている。
「スネあり、二ツ坂!! 二ツ坂高校Bチームの勝ち! お互いに、礼っ」
 まだもう少し、
 この防具を脱ぐのは先の事になりそうです。
――田所、北川、都川みのり、東島旭(pp216-226)

「…あの、真春先輩、次の試合…」
「話しかけないで。人の事、気にかけてる余裕あんの?」
「―――…ありません」
「よかった。私もよ。決勝で会いましょう」
――宮路真春、東島旭(pp239・241)




 こんにちは、mayaです。
 ここ数年ほど、漫画でもライトノベルでもマイナー系部活ジャンルが流行っています。ラノベの場合はSOS団の影響からか、あるものないもの色んな部活動(隣人部とか古典部とか階段部とか奉仕部とか)が出てきましたが、漫画の場合は実在する文化部やマイナースポーツにきちんとスポットを当てている印象があります。

 ブレイクスルーとなったのは、競技かるたを描いた末次由紀さんの『ちはやぶる』(講談社)でしょうが、それ以外でも書道部を扱った河合克敏さん『とめはね』(小学館)、津軽三味線を扱った羅川真里茂さん『ましろのおと』(講談社)、応援部を扱った久保ミツロウさん『アゲイン!!』(講談社)、クイズ研究会を扱った杉基イクラさん『ナナマルサンバツ』(角川書店)、あるいはマイナースポーツならラクロスを描いた古日向いろはさんの『バガタウェイ』(マックガーデン)、タイトルそのまま小野寺浩二さん『カバディ7』(メディアファクトリー)といったところがぱっと思いつきます。

 さて、本作で描かれているのは薙刀部。剣道に似ていますが、構えは五つ、スネも打てる。何より剣道とは違い、やっている高校が圧倒的に少ない。

 本巻はすでに6巻というわけで、春のインハイ予選で三年生は引退、インハイに進出したライバル國領高校との練習試合では地力の差を見せつけられ、体育祭ではチームが一丸となり、二年生と一緒に5泊6日のお寺での過酷な夏合宿をこなし、秋の昇級昇段審査で初めて級をもらい、ついに本領発揮の新人戦編へと突入しています。

 ところで話は変わりますが、マイナージャンルの部活を扱っている作品というのは、その構造上、主人公最強という設定がよく用いられています。一種の貴種流離譚ですね。もともと持って生まれた天性や地力はあるのだけど、何らかの理由でそれを発揮できない、あるいは制限がかかっているといったケースになります。上記の作品だと、競技とは関係のない応援部を描いた『アゲイン!!』、それとチームスポーツの『バガタウェイ』以外、全て主人公には特殊な設定があります。

 こういった構造は仕方のないこととも言えます。そもそも、マイナージャンルはそのモチーフの説明に注力しないといけない都合があり、キャラクター造形に多くのページをかけられません。とはいっても主人公が何かをなさなければストーリーは進みませんから、秘められた力を解放することでカタルシスを生じさせていく傾向が生まれます。

 で、本作『あさひなぐ』――主人公である東島旭さんには何の天性の力もありません。少なくとも、スポーツ漫画史上、最弱であることは間違いないでしょう。
 何といっても眼鏡だし、髪はぼさぼさだし、色気ないし、それに運動音痴だし、すぐ泣くし、そのわりになぜかビッグマウスだし、その上、弱いから練習でも除け者にされがちです。それでも、東島さんは皆に追いつきたいから一人でこつこつ練習し、仲間想いで、馬鹿の一つ覚えみたいに真っ直ぐで、そのせいなのか教わったことを素直にやって勝ったりもします。

 白眉は2巻の練習試合のシーン(17本目「見苦しか女」、18本目「いい鼻血」)。試合前から緊張で泣き、体もがちがちで転倒し、いきなり脳天打たれて頭が真っ白になり、息も上がり、鼻血も出し、本当に見苦しい様を呈しながらも、宮路先輩に声をかけられて一縷の光を見つけます。

 また、3・4巻の寺合宿のシーンもいい(31本目「弱き者の武道」、38本目「理想の女」)。練習で一人だけ除け者にされたのに、こつこつと基礎練習だけやり続け、ついに参加した円陣稽古では皆が諦めかける中、戦う意義を見出して前へと進み出てきます。

 ここまで「努力、友情、勝利」が似合う作品も、今となっては本当に珍しい。

 話がずいぶんと脱線しましたが、本巻では、その努力と友情がついに実を結びます。新人戦に向け、Aチーム(二年)、Bチーム(一年)に分かれた二ツ坂高校は破竹の勢いで勝ち続け、ついに東島さんのいるBチームは準決勝にて昇級昇段審査で友情を培った薬師丸ひろ美さんのいる聖泉Aと、もう片方の宮路先輩率いるAチームはライバル一堂さんのいる國領Aと相対することになります。ラストシーンで約束したように、東島さんと宮路先輩の二人は決勝で相見えることができるのでしょうか。

 ちなみに、個人的には新人戦前の55本目「武具屋の娘」で、國領一年の的林つぐみさんの武具屋を訪問するシーンや、56本目「手のひら」で東島さんが宮路先輩の実家を訪問するシーンがわりと好きだったり。特に、小手を直す為に家に招いておきながら、「あとひとりでできるわね。分んなかったら夏之に聞いて」と弟に無茶振りして、グォー、グォーと鼻息立てて寝つく宮路先輩マジかっけぇ。きれいな先輩のこんな姿見たら百年の恋も冷めるというものですが、宮路先輩ならむしろOK。もっと豪快でひどい寝相さえ見たい。やはり、『あさひなぐ』では一番好きなキャラクターです。

 それはさておき、天性のものも、特別な能力もなく、ただひたむきに、ひたすらに、弱者が弱いなりにがんばって真っ直ぐ勝利を目指す――そんな作品を最近は読んでないなあという方に、本作は絶賛お勧めです。



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